鯨偶蹄目カバ科
半水生の植物食動物
鯨偶蹄目カバ科の動物は1科2属2種、カバとコビトカバです。水中でも陸上でも活動する事ができる半水生の植物食動物です。
胴長の体に、短い足、大きく開く口を持っています。
鯨偶蹄目の中では最後に現れたグループで、クジラ類がもっとも近いグループです。
植物を食べますが、反芻(吐き戻してモグモグ)はしません。
どこまでも半水生
カバはコビトカバよりも水中生活に適応しており、耳と目と鼻の穴が、ほぼ横一直線に並んでいます。
目は盛り上がって少し高い場所にあるので、水中から目を出し、安全が確認できれば、さらに、鼻と耳を出します。
水上にさらす部分は最小限で、見えるし、聞こえるし、呼吸もできるようになっているのです。
四肢には水かきがあって泳ぎがとても上手ですが、プカプカ浮いて泳ぐのではなく、水中に沈んで水底を歩くように泳ぎます。
カバの体は水よりも少し重い比重できており、水に浮くことなくやや沈んだ状態で歩くことができるようになっています。水中では目を開けたまま泳ぎ、鼻の穴と耳は閉じています。また、カバのコドモは、親について歩き、泳ぎを覚えます。
ヌメヌメ、テラテラ、カバの皮膚
←実物のテカリぐあいはチョコボール並みのコビトカバ。
カバの皮膚はとても薄くてデリケート。水分消失率が高く、すぐ乾燥してしまうので、UVカット効果と皮膚を保護するためのネバネバした体液を出してお肌を守っています。
「カバは血の汗をかく」と言われるのは、実は汗ではなくこの皮膚ガードの体液で、空気に触れると赤くなる成分が含まれているため、血のように赤くみえるのです。カバには汗腺がないので、汗はかきません。コビトカバはあまり水に入りませんが、体がテラテラしています。これもこの皮膚ガードの体液のせいです。
カバは外食派。
カバは夜行性で、夕方に地上に上がってエサ場へ向い、草や木の葉を食べ、明け方になると、元の水辺へ帰るというスタイルで暮らしています。エサ場までは決まったルートがあり、道しるべにウンコを撒き散らして目印にします。エサ場までは約4~5キロ、中継地点に水辺があればさらに遠くへ進むこともあります。水中では敵無しのカバですが、エサ場に向かう時と帰る時には、ライオンなどに襲われることが多いようです。
カバ科の進化
従来まで、カバ科の仲間は、現生のカワイノシシのような、半水生のイノシシちっくな動物から進化したと考えられていました。
しかし、遺伝子の分析でカバ科とクジラ類が類縁関係であることがわかり、カバ科の祖先は、イノシシやペッカリーに近いグループとは別系統の、水辺に適応した偶蹄類の動物であると考えられています。
現在見つかっているカバ科の動物の最古の化石は歯のみで、ケニアポタムス。中新世中期(1300万年前)ころのケニアから見つかっています。
カバ科と類縁関係であるとされるクジラ類の最古の動物は「パキケトゥス」で、始新世前期(4800万年前)のパキスタンで見つかっています。
このことから、「パキケトゥス」のように肉食または魚食の方向へ進化した動物と、カバのように、植物食のまま、半水生に適応する方向へ進化した動物が、始新世前期(5500万年前)にはすでにアフリカ周辺に現れていたことになります。